柴野貞夫時事問題研究会 本文へジャンプ

 

(韓国 ハンギョレ紙 2007・11・12付)

 

 

 

2万余名“民衆大会”至る所で衝突 (韓国ソウル11・11、汎国民行動日・訳注)

 

 

警察 6万4千余名 、ヘリコプター・散水車 動員の強制解散

デモ隊の上京も、阻止・・・“集会の自由の侵害”指摘

 

 



韓-米 自由貿易協定(FTA)阻止と、不正規職撤廃、反戦平和を要求する“二〇〇七 汎国民行動日 民衆総決起大会”が11日午後3時ごろ、ソウル市庁前、太平路一帯で、民主労総 組合員と農民・貧民・市民団体会員、民主労働党員など2万余名(警察推算)が参加した中で開かれた。

 

 

この日、集会を禁止した警察は、ヘリコプターと散水車を動員してデモ隊を強制で解散した。この過程で警察12名が負傷をし、デモ隊10余名が警察の盾に當り意識を失うとか、頭を割られるなど、甚だしく負傷し病院に運ばれた。

 

 

主催者側は、ソウル市庁前から南大門に至る往復の車道を全て占拠して、警察と対峙、中で集会を強行した。集会の参加者たちは、 ▲韓-米 自由貿易協定の国会批准阻止、 ▲不正規職法の全面再改定、 ▲金融公共性の強化、また投機資本の規制、ザイテューン部隊の撤収(韓国イラク派遣軍・訳注)、▲露店弾圧中断(韓国に多い露天商の規制・訳注)、▲青年失業解消などを要求した。クオン・ヨンギル(権永吉)民主労働党大統領候補は、“ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権の新自由主義政策が、農民・露天商・労働者たちのいのちを奪い取った。”のであり“新しい闘争の場を宣布する為にこの場所に集まった。”と言った。

 

 

太平路の集会のあと、デモ隊は世宗路の駐韓米国大使館までの街路行進を試みたが、警察と衝突した。デモ隊は、夕方7時頃から太平路で蝋燭の火文化祭を開き、8時ごろ自主解散した。

 

 

警察はこの日、市庁前のソウル広場周辺でだけ、戦警(戦闘警察・訳注)2万4千余名を配置するなど全国的に6万4千余名の警察を動員し集会封鎖に出た。この日、地方から上がって来ようとした農民と労働者たちは、警察に塞がれ、相当数が上京を放棄した。ソウルで民主労総の組合員と、韓国大学総学生会連合の所属大学生、125名、全国的には141名が警察に連行された。

 

 

警察の、集会源泉封鎖(韓国の警察が、軍事独裁政権時代から行ってきた、示威集会参加者を、その出発地点の交通機関の駅、車両、地域、地方で阻止する示威行動弾圧の手段・訳注)と強硬鎮圧に対して、民主労総は“1988年から開かれた全国労働者大会が許されなかったのは、ノ・テウ(盧泰愚・1987・12から1992・12までの、最後の軍事政権大統領・・訳注)政府時代の二次例を除外してからは、今回が初めて”であると“ノ・ムヒョン政府が遂に労働者・農民を敵に回した”と批判した。

 

 

解説


今もなお否定されている労働三権

 

 

1997年~1998年韓国を襲った国際通貨危機は、IMFの介入と国家権力による韓国経済の再生の名の下での、徹底した労働者階級への犠牲の転嫁のもとで、韓国資本主義の救済が計られた。6月抗争の代名詞の一人でもあった、97年12月、政権に就いたキム・デジュン(金大中)は、6月抗争の代名詞の一人でもあり、形式民主主議の擁護者ではあったが、資本の擁護者の立場で、6月抗争の勝利の恩恵から取り残された労働者階級を、さらなる資本の桎梏にさらした。

 

軍事独裁から継続された有名無実の労働三権は、大きく変わることなく引き継がれた。経営者による民事賠償請求権によって労働争議が否定され、「主要防衛産業」と、輸出自由地域での「公益企業」の規定による企業での、労働者の団体行動権が否定された。しかも、常用労働者の「整理解雇制」により、独裁政権時代よりも容易に「労働市場の柔軟化」が計られ、首切りと賃金抑制が図られた。加えて「労働派遣制度」の導入によって、資本による「雇用調整」が自由に行われてきた。現在も、韓国では、労働運動が常に警察と経営者との「物理的衝突」に向かう理由がここにある。政府は今も労働問題を警察的事案にしてしまっているのである。サムソン一般労組のキム・ソンファン委員長を初め、労働争議を指導した労働運動家が警察に拘留され裁判に掛けられる例は、非常に多い。

 

 
増え続ける「非正規労働者」


韓国統計庁「経済活動人工付加調査」によれば、2007年8月現在、正規職、1018万人に対して非正規労働者は570万人に上っている(民主労働党は、実質860万人と指摘している。) 韓国の全産業の労働人口、「2280万人」に占める「非正規職労働者」の存在は、極めて深刻である。ノ・ムヒョン政権は、当初の「参与政権」としての労働者階級の期待を裏切り、この5年間で「非正規職労働者」を186万増やしてしまった。また、国会での批准を迎える韓米自由貿易協定は、韓国の労働者のみならず農民と中小企業商工民にとって大資本への隷属化を生むものとして全国的な反対闘争が激化している。

 

 

11・11のソウルにおける労働者農民の戦いが、ノ・ムヒョン政府との衝突に向かう必然性がここにある。ハンギョレ紙は、この客観報道記事とは別に、11・13付解説記事で、「汎国民大会は、無条件に擁護することは出来ない」と政府と警察を擁護し、ノ・ムヒョン政権を擁護している。一方、労働者の権利擁護と解放を主張する「民主労総」と「民主労働党」を支持する韓国民衆言論「チャムセサン」は、この全国示威行動に対する弾圧によって「ノ・ムヒョンは、遂に労働者の敵となった。」と報じた。